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雲のゐる梢はるかに霧こめて
たかしの山に鹿ぞ鳴くなる

歌の意味
雲のかかる梢ははるか遠くまで霧に包まれ、その高い高師の山で鹿が鳴いているようだ。
鑑賞
秋歌 237

詞書は前の歌に続き「鹿の歌に」
 雲のかかる高い梢のはるか先まで霧が立ちこめ、その高師の山で鹿が鳴いている声を聞いた歌である。雲と霧に包まれた高い山の奥から響く鹿の声で、深い山の秋の寂しさを描いている。
 この歌は『新勅撰和歌集』に入集している。賀茂真淵はこの歌に二つの合点を付している。

 初句「雲のゐる」は、雲がかかっているの意で、山の高さを示す。
 二句「梢はるかに」は、木々の梢がはるか遠くまでの意である。
 三句「霧こめて」は、霧が立ちこめての意である。前の二首の小倉山の霧に続き、本歌でも霧の中の鹿を詠んでいる。
 四句「たかしの山に」の「たかし」は、地名の高師山と、山が高い意を掛けた掛詞である。
 結句「鹿ぞ鳴くなる」は前歌の第二百三十六首と同じ結句で、係助詞「ぞ」を受けて推定の「なる」で結ぶ。

たかし:地名の高師山と、高い意を掛ける。高師山は三河国と遠江国の境にある山
こずゑ:木の幹や枝の先
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
夕されば霧立ちくらし小倉山 山のとかげに鹿ぞ鳴くなる
次の歌
月をのみあはれと思ふさ夜更けて 深山隠れに鹿ぞ鳴くなる