頼めこし人だに訪はぬ故郷に
誰まつ虫の夜半に鳴くらむ
- 歌の意味
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来ると約束して頼みにさせてきた人さえ訪ねて来ない古里で、松虫は誰を待って夜中に鳴いているのだろう。
- 鑑賞
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秋歌 250
詞書「故郷虫」
来ると言って頼みにさせてきた人さえもう訪ねて来ない古里で、松虫はいったい誰を待って夜中に鳴いているのだろうかと詠んだ歌である。人の訪れの絶えた古里の寂しさを、待つ人もないのに鳴く松虫の声に重ねている。
類従本ではこの歌を雑部に収める。なお参照した底本の本文では二句に欠字があり、字数と語の続きから「訪はぬ」と解した。
初句「頼めこし」は、あてにさせてきたの意で、訪ねて来ると約束してきた人をいう。
二句「人だに訪はぬ」の「だに」は、…さえの意で、約束した人さえ訪ねて来ないことを示す。
三句「故郷に」は、古くから人が住み、今は荒れた里をいう。本巻の第二百八首、第二百二十一首に続いて、古里の寂しさを詠む。
四句「誰まつ虫の」の「まつ」は、待つ意と虫の名の松虫を掛けた掛詞である。
結句「夜半に鳴くらむ」は、現在推量の「らむ」で、夜中に鳴いているのだろうと推し量る。前の二首の夜の虫に続き、本歌では古里の松虫を詠んでいる。
たのむ:頼りに思わせる、あてにさせる
まつ:待つ意と、虫の名の松虫を掛ける
- 作者
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源実朝
- 出典
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金槐和歌集
- 前の歌
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庭草の露の数そふ村雨に 夜深き虫の声ぞ悲しき
- 次の歌
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秋深く露寒き夜のきりぎりす ただいたづらに音をのみぞ鳴く