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秋の夜の月の都のきりぎりす
鳴くは昔の影や恋しき

歌の意味
秋の夜、月の照らす都のこおろぎよ。鳴いているのは、昔の都の面影が恋しいからなのだろうか。
鑑賞
秋歌 253

詞書は前の歌に続き「蟋蟀」
 秋の夜、月の照らす都で鳴くこおろぎは、昔の都の面影を恋しく思って鳴いているのだろうかと詠んだ歌である。月の光に照らされた都に過ぎ去った昔をしのび、虫の声に懐旧の思いを託している。
 類従本ではこの歌を「一本及印本所載歌」の部に収める。

 初句「秋の夜の」は、秋の夜のの意である。
 二句「月の都の」は、月の照らす都をいい、月の中の都の意をも響かせる。本巻の第二百二十六首の「月の都」を思わせる語である。
 三句「きりぎりす」は、前の二首から続くこおろぎで、ここで呼びかけるように据えられている。
 四句「鳴くは昔の」は、鳴いているのは昔のの意である。
 結句「影や恋しき」の「影」は面影の意で、「や」は疑問の係助詞、連体形「恋しき」で結ぶ。前歌の第二百五十二首が月夜に鳴くこおろぎを詠んだのを受け、本歌ではその声を懐旧の声として聞いている。

かげ:面影、姿
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
浅茅原露しげき庭のきりぎりす 秋深き夜の月に鳴くなり
次の歌
きりぎりす鳴く夕暮の秋風に 我さへあやな物ぞ悲しき