野辺見れば露霜寒しきりぎりす
夜の衣の薄くやあるらむ
- 歌の意味
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野辺を見ると露霜が寒々と置いている。こおろぎよ、お前の夜の衣も薄くはないだろうか。
- 鑑賞
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秋歌 256
詞書「ある僧に衣を賜ふとて」
ある僧に衣を贈るにあたって詠んだ歌である。野辺に露霜が寒々と置くのを見て、こおろぎの夜の衣も薄いのではないかと思いやる形をとり、寒さの迫る季節に僧の身を気づかう心を、衣を贈る言葉として託している。
類従本と定家所伝本では二句に異同があり、定家所伝本は「露霜寒み」とする。賀茂真淵はこの歌に合点を付している。なお参照した底本の本文では二句と四句に欠字があり、二句は字数と語の続きから「露霜寒し」と解し、四句は定家所伝本の「よるのころもの」によって補った。また結句には異文が並んで見えるため、定家所伝本と同じ「うすくやあるらむ」とした。
初句「野辺見れば」は、野辺を見るとの意である。
二句「露霜寒し」は、露が凍って霜のようになったものが寒々と置いているの意で、ここで句切れとなる。
三句「きりぎりす」は、前歌の第二百五十五首に続くこおろぎで、衣を贈る僧の身をそれに重ねている。
四句「夜の衣の」は、夜に着る衣のの意で、前歌の「夜半の衣」を受けている。
結句「薄くやあるらむ」の「や」は疑問の係助詞で、現在推量の「らむ」の連体形で結ぶ。前歌がこおろぎの衣に霜が置かないことを願ったのに続き、本歌では実際に衣を贈る心を、こおろぎの衣の薄さに託して詠んでいる。
つゆじも:露が凍って霜のようになったもの
よるのころも:夜に着る衣、寝間着
- 作者
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源実朝
- 出典
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金槐和歌集
- 前の歌
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きりぎりす夜半の衣の薄き上に いたくは霜の置かずもあらなむ
- 次の歌
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ささがにの玉貫く糸の緒を弱み 風に乱れて露ぞこぼるる