古典和歌stream

声高み林に叫ぶ猿よりも
我ぞもの思ふ秋の夕べは

歌の意味
声高く林で叫んでいる猿よりも、私のほうがずっともの思いにふけっている。秋の夕べは。
鑑賞
秋歌 258

詞書「山辺眺望といふ事を」
 山辺の眺めという題で詠んだ歌である。林で声高く叫ぶ猿の声は悲しみを誘うものとされるが、その猿よりも自分のほうが深くもの思いにふけっていると詠み、秋の夕べの寂しさを強く表している。
 賀茂真淵は初句について、「声高く」とあるべきだと評している。猿の声を悲しいものとする見方は、漢詩に多く見られる表現に学んだものと見られる。

 初句「声高み」は、声が高いのでの意で、形容詞の語幹に「み」が付いた形である。
 二句「林に叫ぶ」は、林で鋭く鳴き叫ぶの意である。
 三句「猿よりも」の「よりも」は比較で、猿と作者自身とを比べている。
 四句「我ぞもの思ふ」は、係助詞「ぞ」を受けて連体形「思ふ」で結び、ここで句切れとなる。
 結句「秋の夕べは」は、倒置によって時を最後に示す。本歌から第二百六十首までの三首が「山辺眺望」の題で、山辺の夕べを詠んでいる。

ものおもふ:思い悩む、もの思いにふける
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
ささがにの玉貫く糸の緒を弱み 風に乱れて露ぞこぼるる
次の歌
暮れかかる夕べの空を眺むれば 木高き山に秋風ぞ吹く