暮れかかる夕べの空を眺むれば
木高き山に秋風ぞ吹く
- 歌の意味
-
暮れかかる夕べの空を眺めていると、木々の高く茂る山に秋風が吹いている。
- 鑑賞
-
秋歌 259
詞書は前の歌に続き「山辺眺望といふ事を」
暮れかかる夕べの空をもの思いにふけって眺めていると、木々の高く茂る山に秋風が吹きわたっていると詠んだ歌である。空と山と風とで、山辺の夕暮れの広々とした眺めを、静かな寂しさとともに描いている。
類従本では詞書を「山眺望といふことを」とする。賀茂真淵はこの歌に合点を付している。
初句「暮れかかる」は、日が暮れかかるの意である。
二句「夕べの空を」は、夕方の空をの意で、前歌の第二百五十八首の結句「秋の夕べは」を受けている。
三句「眺むれば」は、もの思いにふけりながら眺めていると、の意で、題の「眺望」を表す。本巻の第百八十一首の初句と同じ語である。
四句「木高き山に」は、木々が高く茂った山にの意である。
結句「秋風ぞ吹く」は、係助詞「ぞ」を受けて連体形「吹く」で結ぶ。本巻の第二百二十五首などと同じ結句で、前歌の猿の叫ぶ林に対し、本歌では秋風の吹く山を詠み、声と風とで二首が対をなしている。
ながむ:もの思いにふけりながらじっと見る
- 作者
-
源実朝
- 出典
-
金槐和歌集
- 前の歌
-
声高み林に叫ぶ猿よりも 我ぞもの思ふ秋の夕べは
- 次の歌
-
秋を経て忍びもかねに物ぞ思ふ 小野の山辺の夕暮の空