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眺めやる心もたへぬわたの原
八重の潮路の秋の夕暮

歌の意味
はるかに眺めやる心も耐えきれない。大海原の、幾重にも重なる潮路の秋の夕暮れよ。
鑑賞
秋歌 263

詞書「海のほとりを過ぐとて」
 海辺を通り過ぎるときに詠んだ歌である。大海原のはるかな潮路の上に広がる秋の夕暮れを眺めやると、その果てしなさと寂しさに心も耐えきれないと詠んでいる。
 この歌は『新後撰和歌集』に入集しているが、そこでは上句を「眺めわび行方も知らぬ物ぞ思ふ」とする。賀茂真淵はこの上句について、作者はこのような詠み方をしないので、後の人が直したものであろうと評している。定家所伝本では二句に異同がある。

 初句「眺めやる」は、はるかに見やるの意で、本巻の第二百二首の初句と同じ語である。
 二句「心もたへぬ」は、心も耐えきれないの意で、ここで句切れとなる。
 三句「わたの原」は、大海原をいう。
 四句「八重の潮路の」は、幾重にも重なる遠い海路のの意である。本巻の第二百二十五首の上句と同じ「わたの原八重の潮路」を用い、そこで雁の翼に秋風が吹いた海の景を、本歌では夕暮れの景として詠んでいる。
 結句「秋の夕暮」は体言止めで、前歌の第二百六十二首と同じ結句である。前歌の山田の庵の夕暮れに対し、本歌では海の夕暮れを詠み、山と海とで対をなしている。

わたのはら:大海原
しほぢ:海路、潮の流れる道
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
かくてなほ堪へてしあらばいかがせむ 山田守る庵の秋の夕暮
次の歌
おほかたに物思ふとしもなかりけり ただ我がための秋の夕暮