おほかたに物思ふとしもなかりけり
ただ我がための秋の夕暮
- 歌の意味
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世間一般の人がもの思いにふけるというわけでもなかった。ただ私ひとりのための秋の夕暮れなのだ。
- 鑑賞
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秋歌 264
詞書「秋の夕べによめる」
秋の夕暮れは誰もがもの思いにふけるものというわけではなく、ただ自分ひとりのためにある夕暮れなのだと詠んだ歌である。世の人と隔てられた自分だけが、秋の夕暮れの悲しみを一身に受けているという孤独が、強く表されている。
類従本では詞書を「夕べの心をよめる」とする。秋が自分ひとりのためにあると嘆く趣向は、『古今和歌集』の大江千里の「月見れば千々に物こそ悲しけれ我が身ひとつの秋にはあらねど」を裏返したものと見られる。
初句「おほかたに」は、世間一般に、普通にの意である。
二句「物思ふとしも」の「しも」は強意で、もの思いにふけるというわけでもの意となる。
三句「なかりけり」の「けり」は気づきの詠嘆で、ここで句切れとなる。
四句「ただ我がための」は、ただ私ひとりのためのの意である。
結句「秋の夕暮」は体言止めで、前の二首と同じ結句である。本巻の第二百五十八首の「我ぞもの思ふ」と同じく、自分こそが最も深くもの思いをしているという心を詠んでいる。
おほかた:世間一般、普通
ものおもふ:思い悩む、もの思いにふける
- 作者
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源実朝
- 出典
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金槐和歌集
- 前の歌
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眺めやる心もたへぬわたの原 八重の潮路の秋の夕暮
- 次の歌
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秋ならでただおほかたの風の音も 夕べはことに悲しきものを