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昔思ふ秋の寝覚めの床の上に
ほのかに通ふ峰の秋風

歌の意味
昔のことを思い出しながら、秋の夜にふと目覚めた寝床の上に、峰から吹く秋風がかすかに通ってくる。
鑑賞
秋歌 268

詞書は前の歌に続き「秋の歌」
 昔を思い出しながら秋の夜に目覚めた寝床の上に、峰から吹き下ろす秋風がかすかに通ってくると詠んだ歌である。懐旧の思いに沈む夜更けの静けさを、かすかな風の感触によって描いている。
 初句は『新古今和歌集』の藤原俊成の「昔思ふ草の庵の夜の雨に涙な添へそ山ほととぎす」の初句と同じである。定家所伝本では三句に異同がある。

 初句「昔思ふ」は字余りで、昔のことを思い出すの意である。
 二句「秋の寝覚めの」は、秋の夜にふと目を覚ますことをいう。
 三句「床の上に」は字余りで、寝床の上にの意である。
 四句「ほのかに通ふ」は、かすかに吹き通ってくるの意である。
 結句「峰の秋風」は体言止めで、寝床に届く風を最後に示す。前歌の第二百六十七首で独り寝を嘆いた夜が、本歌では昔を思う寝覚めの夜となり、秋風が二首を貫いている。

ねざめ:夜中にふと目を覚ますこと
かよふ:行き来する、通ってくる
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
秋風はやや肌寒くなりにけり ひとりや寝なむ長きこの夜を
次の歌
住吉の岸の松吹く秋風を 頼めて波のよるを待ちける