古典和歌stream

住吉の岸の松吹く秋風を
頼めて波のよるを待ちける

歌の意味
住吉の岸の松を吹く秋風をあてにして、波は岸に寄せる夜を待っていたのだなあ。
鑑賞
秋歌 269

詞書「声うちそふる沖つ白波といふ事を人々あまた仕うまつりしついでに」
 「声うちそふる沖つ白波」という題で人々が大勢歌を詠んだ折に、作者が詠んだ歌である。住吉の岸の松を吹く秋風をあてにして、沖の白波が岸に寄せる夜を待っていたのだと見立て、松風と波音とが声を合わせる住吉の浜の秋の夜を描いている。
 題は『古今和歌集』の凡河内躬恒の「住の江の松を秋風吹くからに声うちそふる沖つ白波」の下句である。類従本ではこの歌を雑部に収め、初句を「住の江の」と書く。賀茂真淵は初句について、「住吉」と書いても「すみのえ」と読むべきであると評している。なお参照した底本の本文では初句に欠字があり、真淵の評と類従本によって「住吉の」と解し、「すみのえの」と読んだ。

 初句「住吉の」は、摂津国の歌枕である住吉の浜をいい、「すみのえ」と読む。題の本歌の「住の江」と同じ地である。
 二句「岸の松吹く」は、岸辺の松を吹くの意で、住吉の松は古くから名高い。
 三句「秋風を」は、波が頼みとする秋風を示す。
 四句「頼めて波の」は、あてにしての意で、波を人のように見立てている。
 結句「よるを待ちける」の「よる」は、波が岸に寄る意と夜の意を掛けた掛詞である。「ける」は気づきの詠嘆を込めた連体形で、波が夜を待っていたのだと結ぶ。

すみのえ:摂津国(今の大阪市住吉区)の海岸。住吉
たのむ:あてにする、頼りにする
よる:波が岸に寄る意と、夜の意を掛ける
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
昔思ふ秋の寝覚めの床の上に ほのかに通ふ峰の秋風
次の歌
月清み秋の夜いたく更けにけり 佐保の川原に千鳥しば鳴く