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天の原ふり放け見れば月清み
秋の夜いたく更けにけるかな

歌の意味
大空をふり仰いで遠く見やると、月が清らかなので、秋の夜はすっかり更けてしまったことだなあ。
鑑賞
秋歌 271

詞書は前の歌に続き「月の歌とて」
 大空をふり仰ぐと月があまりに清らかなので、眺めているうちに秋の夜がすっかり更けてしまったと詠んだ歌である。月の清らかさに心を奪われて時を忘れるさまを、万葉調の大らかな調べで描いている。
 この歌は『新拾遺和歌集』に入集している。賀茂真淵はこの歌に二つの合点を付している。

 初句「天の原」は大空をいう。本巻の第二百首、第二百二十九首と同じ初句である。
 二句「ふり放け見れば」は、ふり仰いで遠くを見ると、の意である。第二百二十九首と同じ初句と二句で、そこでは清き月夜に雁が渡り、本歌では清き月に夜が更けている。
 三句「月清み」は前歌の第二百七十首の初句と同じ句で、月が清らかなのでの意である。
 四句「秋の夜いたく」は前歌の二句と同じ句である。
 結句「更けにけるかな」の「けるかな」は詠嘆で、すっかり更けてしまったことだと結ぶ。前歌の「更けにけり」を受けて、二首がほとんど同じ語句で月夜の更けを詠み、前歌が川原の千鳥へ、本歌が大空へと視線を向けている。

ふりさく:ふり仰いで遠くを見る
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
月清み秋の夜いたく更けにけり 佐保の川原に千鳥しば鳴く
次の歌
我ながらおぼえず落つる袖の露 月にもの思ふ夜ごろ経ぬれば