我ながらおぼえず落つる袖の露
月にもの思ふ夜ごろ経ぬれば
- 歌の意味
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自分のことながら、思わずこぼれ落ちる袖の露よ。月を見てもの思いにふける夜を幾夜も重ねてきたので。
- 鑑賞
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秋歌 272
詞書は前の歌に続き「月の歌とて」
月を眺めてもの思いにふける夜を幾夜も重ねてきたので、自分でも気づかぬうちに袖に涙の露がこぼれ落ちると詠んだ歌である。月に誘われる物思いの深さを、思わずこぼれる涙によって表している。
類従本では詞書を「月をよめる」とし、類従本と定家所伝本では二句を「おぼえず置くか」とする。賀茂真淵は二句について、後世風の詠みぶりであると評している。
初句「我ながら」は、自分のことでありながらの意である。
二句「おぼえず落つる」は、思わずこぼれ落ちるの意である。
三句「袖の露」は、袖に置く露をいい、涙を露に見立てており、ここで句切れとなる。本巻の第百九十一首、第二百四十五首に続き、袖の露を涙に重ねる趣向である。
四句「月にもの思ふ」は字余りで、月を見てもの思いにふけるの意である。前の二首で月の清らかさを詠んだのに対し、本歌では月が誘う物思いを詠む。
結句「夜ごろ経ぬれば」は、幾夜も過ごしてきたのでの意で、「ば」は已然形に付いて原因を表し、倒置によって涙の理由を最後に示す。
おぼゆ:思われる、自然に意識される
よごろ:幾夜もの間、このごろの夜々
- 作者
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源実朝
- 出典
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金槐和歌集
- 前の歌
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天の原ふり放け見れば月清み 秋の夜いたく更けにけるかな
- 次の歌
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思ひ出でて昔をしのぶ袖の上に ありしにもあらぬ月ぞ宿れる