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草の庵にひとり眺めて年も経ぬ
友なき宿の秋の夜の月

歌の意味
草の庵でひとり眺めて、年月も過ぎてしまった。友のいない住まいの、秋の夜の月よ。
鑑賞
秋歌 274

詞書「閑居望月」
 草の庵にひとり住み、ひとりで月を眺めているうちに年月も過ぎてしまったと、友のいない住まいの秋の夜の月を詠んだ歌である。閑居の孤独と、ただひとり月と向き合う静かな歳月とを描いている。
 類従本と定家所伝本では初句と四句に異同がある。

 初句「草の庵に」は字余りで、草で葺いた粗末な庵にの意である。
 二句「ひとり眺めて」は、ひとりでもの思いにふけりながら眺めての意である。
 三句「年も経ぬ」の「ぬ」は完了の助動詞で、年月も過ぎてしまったと言い切り、ここで句切れとなる。
 四句「友なき宿の」は、友もいない住まいのの意で、題の「閑居」を表す。
 結句「秋の夜の月」は体言止めで、題の「望月」を表す。本巻の第二百二首と同じ結句である。前の数首の一夜の月に対し、本歌では年月を重ねて眺める月を詠み、一夜と歳月という異なる尺度で月を眺めている。

いほ:草木で造った粗末な住まい
ながむ:もの思いにふけりながらじっと見る
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
思ひ出でて昔をしのぶ袖の上に ありしにもあらぬ月ぞ宿れる
次の歌
浅茅原主なき宿の庭の面に あはれ幾夜の月はすみけむ