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須磨の海人の袖吹き返す潮風に
うらみて更くる秋の夜の月

歌の意味
須磨の海人の袖を吹き返す潮風に、浦を見下ろしながら恨めしげに更けてゆく、秋の夜の月よ。
鑑賞
秋歌 281

詞書は前の歌に続き「海辺月」
 須磨の浦で、海人の袖を吹き返す潮風の吹くなか、秋の夜の月が浦を見下ろしながら恨めしげに更けてゆくと詠んだ歌である。わびしい須磨の浦の情景に、恨みを含んだような月の姿を重ね、哀切な海辺の秋の夜を描いている。
 定家所伝本では三句に異同がある。賀茂真淵は「うらみて更くる」について、後世風の詠みぶりであると評している。

 初句「須磨の海人の」は字余りで、摂津国の歌枕である須磨の浦の海人をいう。須磨は寂しくわびしい浦として古くから詠まれた。
 二句「袖吹き返す」は、袖を吹いて裏返すの意である。
 三句「潮風に」は、海から吹く潮気を含んだ風にの意である。
 四句「うらみて更くる」の「うらみ」は、浦を見る意と恨む意を掛けた掛詞で、風に吹き返された袖が裏を見せる意も響く。
 結句「秋の夜の月」は体言止めで、本巻の第二百七十九首と同じ結句である。前歌の第二百八十首の伊勢の海の有明の月に対し、本歌では須磨の浦の更けゆく月を詠み、伊勢と須磨とで海辺の月を並べている。

すま:摂津国(今の神戸市須磨区)の海岸。歌枕
あま:海で漁をする人
うらむ:浦を見る意と、恨む意を掛ける
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
伊勢の海や波にたけたる秋の夜の 有明の月に松風ぞ吹く
次の歌
塩竈の浦吹く風に秋たけて まがきが島に月傾きぬ