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月見れば衣手寒し更級や
姥捨山の峰の秋風

歌の意味
月を見ていると袖が寒い。更級の姨捨山の峰を吹く秋風よ。
鑑賞
秋歌 284

詞書は前の歌に続き「名所秋月」
 信濃の更級にある姨捨山で月を見ていると、峰を吹く秋風に袖が寒く感じられると詠んだ歌である。月の名所である姨捨山の、澄んだ月光と冷たい山風とを、簡潔な言葉で印象深く描いている。
 この歌は『続千載和歌集』に入集している。賀茂真淵はこの歌に二つの合点を付している。姨捨山は、『古今和歌集』のよみ人しらずの「わが心慰めかねつ更級や姨捨山に照る月を見て」以来、月の名所として名高い。

 初句「月見れば」は、月を見ているとの意である。
 二句「衣手寒し」は、袖が寒いの意で、ここで句切れとなる。本巻の第百八十首、第百八十一首の「衣手寒し」と同じ句で、秋部の初めには秋の初風に感じた寒さを、本歌では深まった秋の月夜に感じている。
 三句「更級や」の「や」は詠嘆の間投助詞で、信濃国の地名を示す。
 四句「姥捨山の」は、更級にある月の名所の山をいう。
 結句「峰の秋風」は体言止めで、本巻の第二百六十八首と同じ結句である。次歌の第二百八十五首も更級の姨捨の月を詠み、二首が同じ名所で並んでいる。

ころもで:袖
さらしな:信濃国(今の長野県千曲市付近)の地名
をばすてやま:更級にある山。月の名所
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
さざ波や比良の山風さ夜更けて 月影寂し志賀の唐崎
次の歌
山寒み衣手薄し更級や 姥捨の月に秋更けしかば