ひとり寝る寝覚めに聞くぞあはれなる
ふしみの里に衣打つ声
- 歌の意味
-
ひとり寝の夜中にふと目覚めて聞くのは、なんとしみじみと身にしみることか。伏見の里で衣を打つ砧の音は。
- 鑑賞
-
秋歌 291
詞書「擣衣をよめる」
ひとり寝の夜にふと目覚めたとき、伏見の里から聞こえてくる砧の音がしみじみと心にしみると詠んだ歌である。独り寝の寂しさの中で聞く砧の音に、深い哀感を寄せている。
初句「ひとり寝る」は、ひとりで寝るの意である。本巻の第二百三十一首、第二百六十七首の「ひとりや寝なむ」に続き、独り寝の夜を詠む。
二句「寝覚めに聞くぞ」の「ぞ」は係助詞で、寝覚めに聞くことを強く示す。本巻の第二百八十九首の「寝覚めて聞けば」を受けている。
三句「あはれなる」は「ぞ」の結びの連体形で、しみじみと心にしみるの意となり、ここで句切れとなる。
四句「ふしみの里に」の「ふしみ」は、山城国の地名の伏見と、横になって伏す意の「伏し」を掛けた掛詞で、初句のひとり寝と響き合う。
結句「衣打つ声」は体言止めで、倒置によってあわれを誘う砧の音を最後に示す。擣衣の五首をこの句で締めくくっている。
ねざめ:夜中にふと目を覚ますこと
ふしみ:山城国の地名の伏見と、横になって伏す意を掛ける
- 作者
-
源実朝
- 出典
-
金槐和歌集
- 前の歌
-
み吉野の山下風の寒き夜を 誰ふるさとに衣打つらむ
- 次の歌
-
濡れて折る袖の月影更けにけり まがきの菊の花の上の露