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今朝来鳴く雁がねの寒み唐衣
たつたの山は紅葉しにけり

歌の意味
今朝やって来て鳴く雁の声が寒々としているので、竜田の山はすっかり紅葉したことだ。
鑑賞
秋歌 300

詞書「雁の鳴くを聞きて」
 今朝やって来て鳴く雁の声が寒々と聞こえ、その寒さに竜田山がすっかり紅葉したと詠んだ歌である。雁の声の寒さが山を染めるという見立てで、秋の深まりを描いている。
 類従本では詞書を「雁の鳴くを聞きてよめる」とし、類従本と定家所伝本では結句を「紅葉しぬらむ」とする。賀茂真淵はこの歌に合点を付している。前歌と同じく、『万葉集』の「雁がねの来鳴きしなべに唐衣竜田の山はもみぢそめたり」を踏まえている。なお参照した底本の本文では初句に欠字があり、定家所伝本の「けさきなく」によって補った。

 初句「今朝来鳴く」は、今朝やって来て鳴くの意である。
 二句「雁がねの寒み」は字余りで、雁の声が寒々としているのでの意で、形容詞の語幹に「み」が付いて理由を表す。
 三句「唐衣」は、衣を裁つ意から「たつ」の音を導いて「竜田」にかかる枕詞である。
 四句「たつたの山は」の「たつ」は、唐衣を裁つ意と地名の竜田を掛けた掛詞である。前歌の第二百九十九首と同じ竜田山を詠む。
 結句「紅葉しにけり」は、本巻の第二百九十七首と同じ結句で、「けり」は気づきの詠嘆である。前歌では雁と嵐が、本歌では雁の声の寒さが竜田山を色づかせており、二首が同じ山と同じ趣向を詠み分けている。

かりがね:雁の鳴き声。また雁
からごろも:中国風の美しい衣。「裁つ」の意から「竜田」などにかかる枕詞
たつ:唐衣を裁つ意と、地名の竜田を掛ける
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
雁鳴きて寒き嵐の吹くなべに 立田の山は色づきにけり
次の歌
雁鳴きて吹く風寒み高円の 野辺の浅茅は色づきにけり