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年ごとに秋の別れはあまたあれど
今日の暮るるぞわびしかりける

歌の意味
年ごとに秋との別れは何度もあったけれど、今日という日が暮れてゆくのは、とりわけわびしいことだ。
鑑賞
秋歌 305

詞書は前の歌に続き「惜秋といふ事を」
 年ごとに秋との別れは何度も経験してきたけれど、今年の秋の終わる今日が暮れてゆくのは、とりわけわびしく感じられると詠んだ歌である。繰り返される別れにも慣れることなく、そのたびに新たな寂しさを覚える心を描いている。
 類従本と定家所伝本では初句を「年ごとの」とする。なお参照した底本の本文では初句に欠字があり、字数から「に」を補って「年ごとに」と解した。

 初句「年ごとに」は、毎年の意である。前歌の第三百四首の「来る秋ごとに」を受けている。
 二句「秋の別れは」は、秋と別れることはの意である。
 三句「あまたあれど」は字余りで、何度もあったけれどの意で、「ど」は逆接の接続助詞である。
 四句「今日の暮るるぞ」の「ぞ」は係助詞で、今日という日が暮れることを強く示す。
 結句「わびしかりける」は「ぞ」の結びの連体形で、とりわけわびしいことだと結ぶ。前歌が秋ごとに惜しまれる今日を詠んだのに対し、本歌では幾度もの別れと今日一日とを並べ、歳月と一日という異なる尺度で秋の別れを詠んでいる。

くる:日が暮れる、終わる
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
長月の有明の月の尽きずのみ 来る秋ごとに惜しき今日かな
次の歌
虫の音もほのかになりぬ花薄 秋のすゑ葉に霜や置くらむ