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神無月木の葉降りにし山里は
時雨にまがふ松の風かな

歌の意味
神無月に木の葉が散り落ちてしまった山里では、時雨の音と聞き分けられない松風が吹いていることよ。
鑑賞
冬歌 323

詞書「松風似時雨」
 松風が時雨に似るという題で詠んだ歌である。神無月に木の葉が散り尽くした山里では、松を吹く風の音が時雨の降る音と紛れて聞こえると詠む。木の葉の音が絶えた静けさの中で、松風の音がいっそう際立っている。
 類従本では詞書を「まつ風しぐれににたり」とする。

 初句「神無月」は、本巻の第三百十九首から続く「神無月」の歌の五首目にあたる。
 二句「木の葉降りにし」は、木の葉が雨のように散り落ちてしまったの意である。
 三句「山里は」は、山の中の村里をいう。
 四句「時雨にまがふ」は、時雨の音と見分けがつかないの意である。次歌の二句にも「まがふ」が用いられ、二首で同じ題意を詠んでいる。
 結句「松の風かな」の「かな」は詠嘆で、時雨と紛れる松風を最後に示す。

やまざと:山の中の村里
まがふ:入り混じって見分けがつかなくなる
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
下紅葉かつはうつろふ柞原 神無月とて時雨降れてへ
次の歌
降らぬ夜も降る夜もまがふ時雨かな 木の葉の後の嶺の松風