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千鳥鳴く佐保の川原の月清み
衣手寒し夜や更けぬらむ

歌の意味
千鳥の鳴く佐保の川原の月が清らかに澄んでいるので、袖が寒い。夜が更けてしまったのだろうか。
鑑賞
冬歌 341

詞書「河辺冬月」
 川辺の冬の月という題で詠んだ歌である。千鳥の鳴く佐保の川原に月が清らかに照り、その冷たい光に袖が寒く感じられて、夜が更けたのだろうかと思いやる。千鳥の声、月の光、袖の寒さを重ね、冬の川辺の夜を描いている。
 定家所伝本では結句を「夜や更けにけむ」とする。

 初句「千鳥鳴く」は、佐保の川原を飾る冬の景物で、本巻の第三百五十一首からの千鳥の歌を先取りしている。
 二句「佐保の川原の」は、大和国の佐保川の川原をいう。巻第三の第百八十一首の四句と同じ句で、そこでは秋の初風が吹いていた同じ川原に、本歌では冬の月が照っている。
 三句「月清み」は、「…み」の形で原因を表し、月が清らかなのでの意となる。前の二首の池と湖の月に続き、本歌では川の月を詠む。
 四句「衣手寒し」は、袖が寒いの意で、ここで句切れとなる。巻第三の第百八十一首の二句と同じ句である。
 結句「夜や更けぬらむ」は、「や」を受けて「らむ」で結び、夜が更けてしまったのだろうかと推し量る。

さほ:大和国(今の奈良市)の地名。佐保川が流れる
ころもで:袖
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
比良の山山風寒み唐崎の 鳰の湖月ぞ凍れる
次の歌
さ夜更けて雲間の月の影見れば 袖に知られぬ霜ぞ置きける