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もののふの矢並つくろふ小手の上に
霰たばしる那須の篠原

歌の意味
武士が箙に差した矢の並びを整えている、その籠手の上に、霰が激しく飛び散る那須の篠原よ。
鑑賞
冬歌 348

詞書「霰」
 霰という題で詠んだ歌である。那須の篠原で、武士が箙に差した矢の並びを整えている、その籠手の上に霰が激しく打ちつけて飛び散ると詠む。狩り場に立つ武士の姿と、激しく降る霰の音と勢いを、引き締まった調べで描いている。源実朝の代表作の一つとして知られる一首である。
 類従本ではこの歌を「一本及印本所載歌」の部に収める。賀茂真淵はこの歌に二重の合点を付し、戦に立って背負った矢の乱れを直そうと両手を肩の上へやった、その籠手に霰が打ちつけて飛び散るさまは、柿本人麻呂が詠んだかのような勢いであり、また「篠原」という地名も霰と切り離せない縁があると評している。

 初句「もののふの」は、武士のの意である。本巻の第三百九十九首の初句も同じ語で始まる。
 二句「矢並つくろふ」は、箙に差した矢の並びを整えるの意である。
 三句「小手の上に」は、腕を守る武具である籠手の上にの意である。
 四句「霰たばしる」は、霰が勢いよく飛び散るの意で、霰が籠手に当たってはね返る音と動きを捉えている。
 結句「那須の篠原」は、下野国の那須野の篠の生えた原をいい、体言止めで一首を力強く結ぶ。

もののふ:武士
やなみ:箙(えびら)に差した矢の並び
つくろふ:整える、直す
こて:腕を守る武具、籠手
たばしる:勢いよく飛び散る
しのはら:篠竹の生えている原
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
雲深きみ山の嵐冴え冴えて 生駒の嶽に霰降るらし
次の歌
笹の葉のみ山もそよに霰降り 寒き霜夜を独りかも寝む