夜を寒み浦の松風吹きすさび
虫明の波に千鳥鳴くなり
- 歌の意味
-
夜が寒いので浦の松風が吹きすさび、虫明の波の上で千鳥が鳴いている。
- 鑑賞
-
冬歌 354
詞書は前の歌に続き「海辺千鳥といふことを人々に数多仕うまつらせしついでに」
前歌と同じ折に詠んだ歌である。夜が寒く、浦の松風が激しく吹き荒れるなか、虫明の瀬戸の波に千鳥が鳴いていると詠む。松風の音と波の音に千鳥の声を重ね、冬の夜の海辺を描いている。
類従本では三句を「吹きむすび」とし、定家所伝本では「吹きむせび」とする。賀茂真淵はこの歌に合点を付している。
初句「夜を寒み」は、夜が寒いのでの意で、本巻の第三百三十一首と同じ初句である。
二句「浦の松風」は、入り江を吹く松風をいう。
三句「吹きすさび」は、激しく吹き荒れての意である。
四句「虫明の波に」は、備前国の歌枕である虫明の瀬戸の波をいう。
結句「千鳥鳴くなり」は、本巻の第三百五十一首と同じ結句である。
ふきすさぶ:激しく吹き荒れる
むしあけ:備前国(今の岡山県瀬戸内市)の地名。虫明の瀬戸は歌枕
- 作者
-
源実朝
- 出典
-
金槐和歌集
- 前の歌
-
夕月夜満つ潮合ひの潟を無み 波にしをれて鳴く千鳥かな
- 次の歌
-
月清みさ夜更けゆけば伊勢島や 一志の浦に千鳥鳴くなり