- 歌の意味
-
巻向の檜原を吹く嵐が冷たく冴えわたって、弓月が嶽には雪が降ったことだ。
- 鑑賞
-
冬歌 370
詞書は前の歌に続き「雪」
巻向の檜原を吹く嵐が冷たく冴えわたり、弓月が嶽には雪が降ったと詠んだ歌である。『万葉集』の柿本人麻呂歌集に詠まれた巻向や弓月が嶽の地名を用い、古風な調べで大和の山の雪を描いている。
この歌は『風雅和歌集』に入集している。賀茂真淵はこの歌に合点を付している。
初句「巻向の」は、大和国の地名で、『万葉集』に多く詠まれている。
二句「檜原の嵐」は、檜の生い茂る原を吹く激しい風をいう。
三句「冴え冴えて」は、本巻の第三百四十五首から第三百四十七首までと同じ句で、冷たく冴えわたるの意である。
四句「弓月が嶽に」は、巻向山の峰の一つをいう。
結句「雪降りにけり」の「けり」は詠嘆で、雪が降ったことに気づいた感動を表す。本巻の第三百四十七首の「霰降るらし」と同じ組み立てながら、本歌は推定ではなく、降ったと言い切っている。
まきむく:大和国(今の奈良県桜井市)の地名
ひばら:檜の生い茂る原
ゆつきがたけ:巻向山の峰の一つ
- 作者
-
源実朝
- 出典
-
金槐和歌集
- 前の歌
-
深山には白雪降れり信楽の 真木の杣人道たどるらし
- 次の歌
-
まきの戸をあさけの雲の衣手に 雪を吹き巻く山嵐の風