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うちつけに物ぞ悲しき初瀬山
尾上の鐘の雪の夕暮れ

歌の意味
急に、もの悲しくなることだ。初瀬山の峰の寺の鐘が響く、雪の夕暮れは。
鑑賞
冬歌 382

詞書「寺辺夕雪」
 寺のあたりの夕べの雪という題で詠んだ歌である。初瀬山の峰の寺から鐘の音が響く雪の夕暮れに、急にもの悲しくなると詠む。鐘の音、雪、夕暮れが重なり、不意に胸に迫る悲しみを詠んでいる。
 定家所伝本では結句を欠く。賀茂真淵は、「雪の夕暮れ」という言葉は後世のもので作者にふさわしくなく、これを制の詞とするなどは論ずるにも足りず、古風を好む人なら詠めと言われても詠まないだろうと評している。

 初句「うちつけに」は、急に、不意にの意である。
 二句「物ぞ悲しき」は、係助詞「ぞ」を受けて形容詞の連体形で結び、ここで句切れとなる。
 三句「初瀬山」は、大和国の初瀬にある山で、長谷寺がある。巻第三の巻末の第三百十一首でも初瀬山の入相の鐘に秋の暮れを詠んでおり、本歌では同じ初瀬山の鐘に雪の夕暮れを詠む。
 四句「尾上の鐘の」は、山の頂の寺の鐘のの意である。
 結句「雪の夕暮れ」は、本巻の第三百七十五首と同じ結句で、賀茂真淵が後世の言葉と評した句である。次歌も同じ結句で結ぶ。

はつせやま:大和国(今の奈良県桜井市初瀬)の山。長谷寺がある
をのへ:山の頂
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
立ち上る煙はなほぞつれもなき 雪の朝の塩釜の浦
次の歌
故郷はうらさびしともなきものを 吉野の奥の雪の夕暮れ