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故郷はうらさびしともなきものを
吉野の奥の雪の夕暮れ

歌の意味
古里はうら寂しいというほどでもないのに、吉野の山奥の雪の夕暮れは寂しいことよ。
鑑賞
冬歌 383

詞書「閑居雪」
 静かな住まいの雪という題で詠んだ歌である。住み慣れた古里はうら寂しいというほどでもないのに、吉野の山奥に閑居して迎える雪の夕暮れは寂しいと詠む。古里と吉野の奥とを対比させ、山奥の雪の夕暮れの寂しさを際立たせている。
 底本の注記によれば、原本では二句を「そらさびしとも」とするが、校訂者が類従本によって「うらさびしとも」と改めたもので、ここではその改訂に従う。定家所伝本では結句を欠く。賀茂真淵は前歌と同じく「雪の夕暮れ」の語を後世風であると評している。

 初句「故郷は」は、古くから住み慣れた所はの意である。
 二句「うらさびしとも」は、心寂しいとはの意で、底本の校訂者が類従本によって改めた句である。
 三句「なきものを」の「ものを」は逆接で、寂しいというほどでもないのにの意となる。
 四句「吉野の奥の」は、本巻の第三百七十四首の二句と同じ句で、吉野の山奥をいう。
 結句「雪の夕暮れ」は前歌と同じ結句で、体言止めで寂しさの極まる時を示す。

ふるさと:古くから住みなれた所、また旧都
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
うちつけに物ぞ悲しき初瀬山 尾上の鐘の雪の夕暮れ
次の歌
今日もまた独り眺めて暮れにけり 頼めぬ宿の庭の白雪