主知れと引きける駒の雪を分けば
賢き跡に帰れとぞ思ふ
- 歌の意味
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主を知れと言って引いて贈ってくれた馬が雪を分けて行くならば、賢い馬の故事の跡にならって、もとの所へ帰れと思う。
- 鑑賞
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冬歌 386
詞書「返し」
二階堂行光から贈られた馬に添えられた歌への返歌である。前に置かれた詞書によれば、建暦二年(1212)十二月の雪の降った日、作者は山家の景色を見ようと民部大夫行光の家を訪れ、山城判官行村らも集まって和歌と管絃の遊びがあり、夜更けに帰った。その際に行光が黒馬を贈り、翌日その馬を見ると、たてがみに紙が結ばれていた。そこには行光の歌「この雪を分けて心の君にあればぬし知る駒のためしをぞ引く」が記されており、雪を分けて帰るあなたに心を寄せているので、主を知る馬の故事にならってこの馬を引いて差し上げる、という意であった。
これに答えた作者の歌で、主を知れと引いてきた馬が雪を分けて行くならば、賢い故事の跡にならって帰れと思うと詠む。行光の歌の「主知る駒」「雪を分けて」を受けて、そのまま答えの言葉としている。歌の後には、作者がみずから書いて和歌に心得のある者を選び、内藤馬允知親を使いとして届けたという後書が添えられている。
類従本では、行光の歌と本歌をともに「一本及印本所載歌」の部に収め、後書を欠く。底本の注記によれば、原本ではこの後に「うたなし」とあるが、これは誤りとされる。行光の歌には歌番号が付されておらず、作者以外の歌であるため、ここでは本歌の経緯としてのみ記した。
初句「主知れと」は、主を知れと言っての意で、行光の歌の「ぬし知る駒」を受けている。
二句「引きける駒の」は、引いて贈ってくれた馬のの意である。
三句「雪を分けば」は字余りで、雪を分けて行くならばの意となる。行光の歌の初句「この雪を分けて」を受けている。
四句「賢き跡に」は、賢い馬の故事が残した先例をいい、主を知る馬の故事を指す。
結句「帰れとぞ思ふ」は、係助詞「ぞ」を受けて連体形「思ふ」で結び、帰れと思うと言い切る。
こま:馬
ぬし:主人、持ち主
たつがみ:馬のたてがみ
かうし:和歌などの風流の道に心を寄せる人
- 作者
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源実朝
- 出典
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金槐和歌集
- 前の歌
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降る雪をいかにあはれと眺むらむ 心は思ふとも足立たずして
- 次の歌
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春待ちて霞の袖に重ねよと しもの衣のおきてこそゆけ