春待ちて霞の袖に重ねよと
しもの衣のおきてこそゆけ
- 歌の意味
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春を待って、霞の衣の袖に重ねて着よと、霜の置いた下着の小袖を置いて、朝起きて出て行くのだ。
- 鑑賞
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冬歌 387
詞書「建保五年十二月方違への為に永福寺の僧坊に罷りてあしたあした帰り侍るとて小袖を残し置きて」
建保五年(1217)十二月、方違えのために鎌倉の永福寺の僧坊に泊まり、翌朝帰るときに小袖を残し置いて詠んだ歌である。春を待って霞の衣の袖に重ねて着てくださいと、霜の置く朝に下着の小袖を置いて起きて出て行くと詠む。泊めてくれた僧への心づかいを、季節の言葉に託している。
類従本ではこの歌を「一本及印本所載歌」の部に収める。永福寺は源頼朝が鎌倉に建立した寺である。
初句「春待ちて」は、春を待っての意で、年の暮れの歌であることを示す。
二句「霞の袖に」は、霞を衣に見立てた春の衣の袖にの意である。
三句「重ねよと」は、重ねて着よとの意で、ここまでが置いていく小袖への言葉となっている。
四句「しもの衣の」の「しも」は、霜の意と、下着の意の「下」を掛けた掛詞である。
結句「おきてこそゆけ」の「おき」は、霜が置く意と、朝起きる意の「起き」、小袖を置く意を掛けた掛詞で、係助詞「こそ」を受けて已然形「ゆけ」で結ぶ。
かたたがへ:外出の際、凶の方角を避けて別の所に一泊すること
そうばう:寺の中にある僧の住まい
こそで:袖の小さい衣服。下着として用いた
しも:霜の意と、下着の意の「下」を掛ける
おく:霜が置く意と、朝起きる意の「起く」、物を置く意を掛ける
- 作者
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源実朝
- 出典
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金槐和歌集
- 前の歌
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主知れと引きける駒の雪を分けば 賢き跡に帰れとぞ思ふ
- 次の歌
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炭を焼く人の心もあはれなり さてもこの世を過ぐるならひは