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はかなくて今夜明けなば行く年の
思ひ出もなき春にや逢はなむ

歌の意味
はかなく過ぎて今夜が明けたならば、去っていく年の思い出もないまま、春に出会うことになるのだろうか。
鑑賞
冬歌 403

詞書は前の歌に続き「歳暮」
 大晦日の夜、このままはかなく今夜が明けてしまったら、去っていく年の思い出も何もないまま、新しい春を迎えることになるのだろうかと詠んだ歌である。何もなせずに過ぎた一年への心残りを詠んでいる。
 定家所伝本では四句を「思ひいでもなき」とする。

 初句「はかなくて」は、はかなくむなしくの意である。
 二句「今夜明けなば」の「なば」は、完了の助動詞「ぬ」の未然形「な」と接続助詞「ば」で、今夜が明けてしまったならばの意となる。次歌でも年の最後の夜が明けることを詠む。
 三句「行く年の」は、本巻の第三百九十七首、第三百九十八首の三句と同じ語である。
 四句「思ひ出もなき」は、思い出になるようなこともないの意である。
 結句「春にや逢はなむ」の「や」は疑問の係助詞で、春に出会うことになるのだろうかの意となる。

こよひ:今夜
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
老いらくの頭の雪をとどめ置きて はかなの年や暮れてゆくらむ
次の歌
ぬば玉のこの夜な明けそしばしばも まだふる年のうちぞ思はむ