行く年の行方を問へば世の中の
人こそ一つ設くべらなれ
- 歌の意味
-
去っていく年の行方を尋ねてみると、世の中の人が、それぞれ一つずつ年を受け取っているようだ。
- 鑑賞
-
冬歌 406
詞書は前の歌に続き「歳暮」
去っていく年はどこへ行くのかと尋ねてみると、世の中の人がそれぞれ一つずつ年を受け取り、年を取っていくようだと詠んだ歌である。去りゆく年の行方を、人が年を一つ重ねることに見いだす機知の一首で、冬部の巻末を締めくくっている。
類従本では「年のはての歌」と題して雑部に収める。
初句「行く年の」は、過ぎ去っていく年のの意で、本巻の第三百九十七首、第三百九十八首の三句と同じ語である。
二句「行方を問へば」は、行き先を尋ねるとの意で、初句の「行く」と「行方」の音が重なっている。
三句「世の中の」は、世間のの意である。
四句「人こそ一つ」の「こそ」は係助詞で、結句で結ぶ。人がそれぞれ一つずつ年を得ることをいう。
結句「設くべらなれ」は、「こそ」を受けて推量の「べらなり」の已然形で結び、年を一つ受け取るようだと推し量る。本巻巻頭の第三百十二首が「秋は去ぬ」と季節の去るところから始まったのに対し、巻末の本歌では去りゆく年の行方を問うて結び、巻頭と巻末が去りゆくものによって呼応している。
ゆくへ:行き先
まうく:手に入れる、得る
- 作者
-
源実朝
- 出典
-
金槐和歌集
- 前の歌
-
乳房吸うまだいとけなき緑子の 共に泣きぬる年の暮れかな
- 次の歌
-
春深み峰の嵐に散る花の 定めなき夜に恋妻ぞする