古典和歌stream

小鹿伏す夏野の草の露よりも
知らじなしげき思ひありとは

歌の意味
牡鹿が伏す夏野の草に置く露よりも、もっと深くしげく思う心が私にあるとは、あの人は知らないだろうなあ。
鑑賞
恋歌 409

詞書は前の歌に続き「恋の歌の中に」
 夏野の草に置く露よりもしげく思う心があることを、あの人は知らないだろうと嘆いた歌である。牡鹿が身を伏せるほど茂った夏草とそこに置く露とを、思いの多さの比喩としている。
 賀茂真淵はこの歌に合点を付している。

 初句「小鹿ふす」は、牡鹿が伏しているの意で、夏草の深い茂みを思わせる。
 二句「夏野の草の」は、夏の野に茂る草のの意である。前歌のほととぎすに続いて夏の景物が詠まれている。
 三句「露よりも」は、草葉に置く露よりもの意で、露の多さを比較の基準としている。
 四句「知らじなしげき」の「じ」は打消推量、「な」は詠嘆の終助詞で、知らないだろうなあの意となる。ここで倒置となり、「しげき」は露の多さと思いの多さとを受ける。
 結句「思ひありとは」は、思いがあるとはの意で、四句の「知らじな」に返る倒置である。

をじか:牡鹿
しげし:数が多い、たえまない
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
思ひのみ深きみ山の郭公 人こそ知らね音をのみぞ鳴く
次の歌
わが恋はみ山の松に這ふ葛の しげきを人の問はずぞありける