わが恋はみ山の松に這ふ葛の
しげきを人の問はずぞありける
- 歌の意味
-
私の恋は、深い山の松にはいまつわる葛のようにしげく思っているのに、そのことをあの人は尋ねてもくれないことだ。
- 鑑賞
-
恋歌 410
詞書は前の歌に続き「恋の歌の中に」
深山の松にからみつく葛の茂りに、たえまない恋の思いをたとえ、それほど思っているのにあの人は尋ねてもくれないと嘆いた歌である。
底本の注記によれば、定家所伝本では三句を「はふつたの」とする。ここでは底本の本文に従う。賀茂真淵はこの歌に合点を付している。
初句「わが恋は」は、私の恋はの意で、恋の歌の典型的な歌い出しである。
二句「み山の松に」は、奥深い山の松にの意である。
三句「這ふ葛の」は、這いまつわる葛のようにの意で、ここまでが「しげき」を導く序詞である。
四句「しげきを人の」の「しげき」は、葛の茂りと思いのしげさとを重ねる。前歌の結句近くの「しげき」と同じ語が続いている。
結句「問はずぞありける」の「ぞ」は係助詞で、「ける」と連体形で結ぶ。「けり」は詠嘆で、尋ねてもくれないことに気づいた嘆きを表す。
くず:葛、つるを伸ばして木にからむ草
とふ:訪ねる、様子を尋ねる
- 作者
-
源実朝
- 出典
-
金槐和歌集
- 前の歌
-
小鹿伏す夏野の草の露よりも 知らじなしげき思ひありとは
- 次の歌
-
山繁み木の下隠れ行く水の 音聞きしより我や忘るる