さ夜更けて雁の翼に置く霜の
消えても物は思ふかぎりを
- 歌の意味
-
夜が更けて雁の翼に置く霜のように、たとえ消えてしまっても、思いはどこまでも尽きることがないのに。
- 鑑賞
-
恋歌 416
詞書は前の歌に続き「恋の歌の中に」
夜更けに空を渡る雁の翼に置く霜のように、身は消えてしまっても、恋の物思いには限りがないと詠んだ歌である。前の二首の露を霜に替え、冷え冷えとした夜の空に思いの深さを示している。
類従本では「恋のこころをよめる」と題する。底本の注記によれば、類従本と定家所伝本では三句の「霜」を「露」とする。ここでは底本の本文に従う。
初句「さ夜ふけて」は、夜が更けての意で、「さ」は語調を整える接頭語である。
二句「雁のつばさに」は、空を渡る雁の翼にの意である。前歌のかささぎの羽に続き、鳥の翼が詠まれている。
三句「おく霜の」は、置く霜のようにの意で、ここまでが「消え」を導く。前二首の「おく露」を「おく霜」に替えている。
四句「消えても物は」は、身が消えてしまってもの意で、恋に死ぬことを思わせる。
結句「思ふかぎりを」は、思いには限りがないのにの意で、消えてもなお尽きない思いを詠嘆している。
さよ:夜
ものおもふ:恋の物思いをする
- 作者
-
源実朝
- 出典
-
金槐和歌集
- 前の歌
-
鵲の羽に置く露の丸木橋 踏み見ぬ先に消えや渡らむ
- 次の歌
-
逢ふ事を雲居のよそに行く雁の 遠ざかればや声も聞こえぬ