久方の天飛ぶ雲の風をいたみ
我はしか思ふ妹にし逢はねば
- 歌の意味
-
大空を飛ぶ雲が風の激しさに乱れるように、私もそのように思い乱れている。いとしい人に逢えないので。
- 鑑賞
-
恋歌 432
詞書は前の歌に続き「恋の歌の中に」
大空を飛ぶ雲が激しい風に吹き乱されるように、自分もいとしい人に逢えないために思い乱れていると詠んだ歌である。「妹」「しか」など万葉集の語を用いた素朴な調べを持つ。
初句「久方の」は、「天」にかかる枕詞である。
二句「あまとぶ雲の」は、大空を飛ぶ雲のの意である。前歌の「天の原」の浮雲に続き、空の雲が詠まれている。
三句「風をいたみ」は、風が激しいのでの意で、「を〜み」は原因や理由を表す。
四句「我はしか思ふ」は、私もそのように思い乱れるの意で、「しか」は前の雲のありさまを指す。
結句「妹にしあはねば」は、いとしい人に逢わないのでの意で、「し」は強意の副助詞である。倒置によって理由を後に置いている。
いも:男性が恋人や妻を親しんで呼ぶ語
いたし:風などが激しい
- 作者
-
源実朝
- 出典
-
金槐和歌集
- 前の歌
-
天の原風に浮きたる浮雲の 行方定めぬ恋もするかな
- 次の歌
-
久方の天の川原に住む鶴も 心にあらぬ音をや鳴くらむ