奥山のたつきも知らぬ君により
わが心から迷ふべらなり
- 歌の意味
-
奥山で手がかりもなくさまようように、どうしてよいかもわからないあなたのために、私は自分の心からさまよっているようだ。
- 鑑賞
-
恋歌 439
詞書は前の歌に続き「恋の歌の中に」
奥山で手がかりもなくさまようように、とりつく手立てもないあなたのせいで、自分の心ゆえに迷い続けているようだと詠んだ歌である。
底本は結句の「まよふ」に「まどふ」と傍記する。底本の注記によれば、類従本と定家所伝本では結句に異同がある。賀茂真淵は「たつき」を手がかりの意であるとし、後に「たつ木」と誤解されたと評している。
初句「おく山の」は、奥深い山のの意である。
二句「たつきもしらぬ」は、手がかりもわからないの意で、奥山で道に迷うさまと、相手にとりつく術のないこととを重ねる。
三句「君により」は、あなたのためにの意である。
四句「わが心から」は、自分の心からの意で、誰のせいでもなく自分の思いゆえであることを示す。
結句「まよふべらなり」は、迷っているようだの意で、「べらなり」は推量を表す。
たづき:手がかり、手立て
まよふ:道に迷う、心が乱れる
- 作者
-
源実朝
- 出典
-
金槐和歌集
- 前の歌
-
あしひきの山に住むてふ山賤の 心も知らぬ恋もするかな
- 次の歌
-
奥山の末のたつきもいざ知らず 妹に逢はずて年の経ゆけば