古典和歌stream

鴎ゐる荒磯の洲崎潮満ちて
隠ろひ行けばまさる我が恋

歌の意味
かもめのいる荒磯の洲崎が、潮が満ちて隠れてゆくように、あの人が見えなくなってゆくと、ますますつのる私の恋だ。
鑑賞
恋歌 444

詞書は前の歌に続き「恋の歌の中に」
 かもめのいる荒磯の洲崎が満ち潮に隠れてゆくように、恋しい人が遠ざかり見えなくなるにつれ、恋しさがつのってゆくと詠んだ歌である。満ちてゆく潮と、つのる恋心とを重ねている。
 底本の注記によれば、定家所伝本では二句に異同がある。ここでは底本の本文に従う。

 初句「かもめゐる」は、かもめがいるの意である。前歌の鵜に続き、海辺の鳥が詠まれている。
 二句「荒磯のすさき」は、荒い磯の洲崎の意で、洲崎は海に突き出た砂州である。
 三句「潮みちて」は、潮が満ちての意で、満ちる潮とつのる恋とを重ねる。
 四句「隠ろひ行けば」は、隠れてゆくとの意で、洲崎が潮に隠れることと、恋しい人が見えなくなることとを重ねる。
 結句「まさる我が恋」は、つのってゆく私の恋の意で、体言止めとなっている。

ありそ:岩の多い荒い海岸
すさき:海に突き出た砂州
かくろふ:隠れる
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
沖つ鳥鵜の住む石に寄る波の 間なくも思ふ我ぞ悲しき
次の歌
風吹けば波打つ岸の岩なれや かたくもあるか人の心の