古典和歌stream

岩走る山下たぎつ山川の
心砕けて恋や渡らむ

歌の意味
岩の上をほとばしり、山の麓を激しく流れる山川のように、心が砕けて恋い続けるのだろうか。
鑑賞
恋歌 448

詞書は前の歌に続き「恋の歌の中に」
 岩の上をほとばしって流れ下る山川の激しい流れのように、心が砕けたまま恋い続けるのだろうかと詠んだ歌である。前二首から続く急流の波の連作をしめくくる一首である。
 底本の注記によれば、定家所伝本では初句を「いしばしる」とする。ここでは底本の本文に従う。

 初句「岩ばしる」は、岩の上をほとばしるの意である。
 二句「山下たぎつ」は、山の麓を激しく流れるの意である。
 三句「山川の」は、山の川のようにの意で、前歌の初句と同じ語である。ここまでが「くだけ」を導く序詞である。
 四句「心くだけて」は、心が砕けての意で、川の水が岩に砕けることと重ねる。前二首の「身もくだき」「身をくだく」を「心」に移している。
 結句「恋やわたらむ」の「や」は疑問の係助詞で、「む」と連体形で結ぶ。

いはばしる:岩の上を勢いよく流れる
たぎつ:水が激しく流れる
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
山川の瀬々の岩波湧き返り おのれ一人や身を砕くらむ
次の歌
苔深き石間を伝ふ山水の 音こそ立てね年は経にけり