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苔深き石間を伝ふ山水の
音こそ立てね年は経にけり

歌の意味
苔の深い岩の間を伝って流れる山水のように、音こそ立てないけれども、ひそかに思い続けて年月が過ぎてしまったことだ。
鑑賞
恋歌 449

詞書は前の歌に続き「恋の歌の中に」
 苔深い岩間を音もなく伝って流れる山水のように、声に出して思いを告げることはないまま、ひそかに恋い続けて年月が過ぎてしまったと詠んだ歌である。前歌までの激しい急流から一転し、静かに流れる水で忍ぶ恋を表している。
 底本は下の句に傍記を付しており、底本の注記によれば、その傍記は佐佐木信綱の『校註金槐和歌集』によるものである。ここでは底本の本文に従う。

 初句「苔ふかき」は、苔の深く生えたの意である。
 二句「石間をつたふ」は、岩と岩の間を伝って流れるの意である。
 三句「山水の」は、山の水のようにの意で、ここまでが「おと」を導く序詞である。前歌の激しい「山川」に対し、静かな山水を置いている。
 四句「おとこそたてね」の「こそ」は係助詞で、「たてね」と已然形で結び、逆接で下へ続く。音こそ立てないがの意で、恋を人に知らせないことを重ねる。
 結句「年は経にけり」の「けり」は詠嘆で、年月が過ぎてしまったことに気づいた感慨を表す。

いしま:岩と岩の間
やまみづ:山を流れる水
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
岩走る山下たぎつ山川の 心砕けて恋や渡らむ
次の歌
漏らしわびぬ信夫の奥の山深み 木隠れて行く谷川の水