白山のふりて積もれる雪なれば
下こそ消ゆれ上はつれなし
- 歌の意味
-
白山に古くから降り積もった雪なので、下の方こそ消えてゆくが、表面は素知らぬ顔をしている。
- 鑑賞
-
恋歌 468
詞書は前の歌に続き「名所の恋の心をよめる」
加賀の白山に長年降り積もった雪が、下の方から解けても表面は変わらず白いように、心の内では思いに消え入りそうでも、表面はつれない様子を装っていると詠んだ歌である。
底本は四句に「きえぬ」と傍記する。ここでは底本の本文に従う。
初句「白山の」は、加賀国の歌枕の白山のの意である。
二句「ふりてつもれる」は、雪が降ることと年月が古ることとを掛け、長く積もり続けたの意となる。
三句「雪なれば」は、雪であるのでの意である。前歌の富士の煙から、白山の雪へと対をなしている。
四句「下こそきゆれ」の「こそ」は係助詞で、「きゆれ」と已然形で結び、逆接で下へ続く。雪が下から解けることと、心の内で思いに消え入ることとを重ねる。
結句「うへはつれなし」は、表面は平然としているの意である。前歌の「下にもゆらむ」に対し、内で消える雪を詠んでいる。
ふる:雪が降る意と、年月が古る意を掛ける
つれなし:素知らぬ顔をしている、平然としている
- 作者
-
源実朝
- 出典
-
金槐和歌集
- 前の歌
-
富士の嶺の煙も空に立つものを などかおもひの下に燃ゆらむ
- 次の歌
-
芦屋の灘の塩焼き我なれや 夜はすがらにくゆりわぶらむ