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涙こそ行方も知らぬ三輪の崎
佐野の渡りの雨の夕暮

歌の意味
涙こそ行方もわからないほど流れる。三輪の崎の佐野の渡し場の、雨の夕暮れに。
鑑賞
恋歌 472

詞書は前の歌に続き「名所の恋の心をよめる」
 三輪の崎の佐野の渡し場に降る夕暮れの雨の中で、行方も知れないほどとめどなく涙が流れると詠んだ歌である。雨と涙とが一つになった寂しい情景を描いている。
 賀茂真淵は結句の「雨のゆふぐれ」を後世風であると評している。

 初句「涙こそ」の「こそ」は係助詞で、二句の「知らぬ」で受けるが、結びは流れている。
 二句「ゆくへも知らぬ」は、行方もわからないの意で、涙がとめどなく流れることをいう。
 三句「みわの崎」は、紀伊国の歌枕の三輪の崎の意である。
 四句「さ野のわたりの」は、佐野の渡し場のの意である。
 結句「雨の夕暮」は体言止めで、降る雨と流れる涙とを重ねている。前歌の「もる涙」に続き、涙の歌が続いている。

わたり:渡し場
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
東路のみちのおくなる白河の せきあへぬ袖をもる涙かな
次の歌
人知れず思へば苦し武隈の まつとは待たじ待てばすべなし