雲のゐる吉野の岳に降る雪の
積もり積もりて春に逢ひにけり
- 歌の意味
-
雲のかかる吉野の山に降る雪が積もりに積もって春を迎えるように、思いを積み重ねてついに春に逢えたことだ。
- 鑑賞
-
恋歌 478
詞書は前の歌に続き「名所の恋の心をよめる」
雲のかかる吉野の山に降り積もった雪がやがて春を迎えるように、積もり積もった思いがついに報われて逢うことができたと詠んだ歌である。逢えない嘆きの続く中で、喜びを詠んだ一首である。
賀茂真淵はこの歌に合点を付している。
初句「雲のゐる」は、雲のかかっているの意である。
二句「吉野のたけに」は、大和国の吉野の山にの意である。
三句「ふる雪の」は、降る雪のようにの意で、ここまでが「つもり」を導く序詞である。
四句「つもりつもりて」は、積もりに積もっての意で、雪が積もることと思いが積もることとを重ねる。
結句「春にあひにけり」は、春に逢ったことだの意で、字余りである。「けり」は詠嘆で、雪が春を迎えることと、恋がかなって逢えたこととを重ねる。前歌の「みまく近けむ」の願いが、ここでかなっている。
たけ:高い山
- 作者
-
源実朝
- 出典
-
金槐和歌集
- 前の歌
-
心をし信夫の里に置きたらば あふくま川は見まく近けむ
- 次の歌
-
かくてのみありその浦のありつつも 逢ふ夜もあらば何か恨みむ