かくてのみありその浦のありつつも
逢ふ夜もあらば何か恨みむ
- 歌の意味
-
こうしてばかりいても、荒磯の浦のように生き長らえていて、逢う夜もあるならば、どうして恨むことがあろうか。
- 鑑賞
-
恋歌 479
詞書は前の歌に続き「名所の恋の心をよめる」
こうして逢えないままでいても、生き長らえていつか逢う夜があるのなら、何を恨むことがあろうかと、かすかな望みをつなぐ歌である。「あり」の音を重ねた調べが特徴である。
底本は二句の「浦」に「海」と傍記し、類従本と定家所伝本では二句を「ありその海の」とする。また底本の注記によれば、原本では四句の本文を「あらず」とするが、傍記と類従本によって改めたもので、ここではその改訂に従う。
初句「かくてのみ」は、このようにばかりしての意である。
二句「ありその浦の」は、越中国の歌枕の有磯の浦のの意で、「あり」に「在り」を響かせる。
三句「ありつつも」は、生き長らえていてもの意で、二句の「あり」の音を重ねている。
四句「あふよもあらば」は、逢う夜もあるならばの意である。前歌の逢えた喜びに対し、ここではまだ見ぬ逢瀬を待っている。
結句「何か恨みむ」の「か」は反語で、どうして恨もうか、いや恨みはしないの意である。
ありそ:越中の歌枕の有磯と、荒磯の意
ありつつ:生き長らえて、このままでいて
- 作者
-
源実朝
- 出典
-
金槐和歌集
- 前の歌
-
雲のゐる吉野の岳に降る雪の 積もり積もりて春に逢ひにけり
- 次の歌
-
白波の磯越道なる能登瀬川 後も逢ひ見むみをし絶えずば