庭の面に茂りにけらし八重葎
訪はで幾世の秋か経ぬらむ
- 歌の意味
-
庭の面に茂ってしまったらしい、八重むぐらが。あの人が訪れないまま、幾年の秋が過ぎたのだろう。
- 鑑賞
-
恋歌 508
詞書「冬恋」
恋人が訪れなくなった庭一面に八重むぐらが茂ってしまったらしいと見て、訪れのないまま幾年の秋が過ぎたのかと嘆いた歌である。荒れた庭に、途絶えた恋を重ねている。
初句「庭のおもに」は、庭の面にの意である。
二句「しげりにけらし」は、茂ってしまったらしいの意で、「けらし」は根拠のある推定を表す。ここで句切れとなる。
三句「八重葎」は、幾重にも茂ったつる草の意で、荒れた家の象徴である。倒置によって主語を後に置いている。
四句「とはでいく世の」は、訪れないで幾年のの意である。
結句「秋か経ぬらむ」の「か」は疑問の係助詞で、「らむ」と連体形で結ぶ。本巻の第四百九十一首の「年の経ぬらむ」と同じく、待つ間に過ぎた年月を嘆いている。
やへむぐら:幾重にも茂ったつる草
とふ:訪ねる
- 作者
-
源実朝
- 出典
-
金槐和歌集
- 前の歌
-
五月闇木の下闇の暗ければ おのれ惑ひて鳴く郭公
- 次の歌
-
浅茅原跡なき野辺に置く露の 結ぼほれつつ消えや渡らむ