古典和歌stream

わが袖に覚えず月ぞ宿りける
問ふ人あらばいかが答へむ

歌の意味
私の袖に、思いがけず月が宿っていたことだ。もし尋ねる人がいたら、どう答えたらよいだろう。
鑑賞
恋歌 520

詞書「月前恋」
 気づかないうちに涙で濡れた袖に月の光が映っていたと詠み、もし誰かにそのわけを尋ねられたらどう答えようかと、隠している恋の涙を案じた歌である。袖に宿る月によって、涙を間接的に示している。
 この歌は『風雅和歌集』に入集している。

 初句「わが袖に」は、私の袖にの意である。
 二句「おぼえず月ぞ」は、思いがけず月がの意で、「ぞ」は係助詞である。
 三句「やどりける」は、宿っていたことだの意で、「ぞ」を受けて連体形で結ぶ。袖が涙に濡れているからこそ月が映るのであり、言外に涙を示している。ここで句切れとなる。
 四句「とふ人あらば」は、尋ねる人がいたならばの意である。
 結句「いかが答へむ」は、どう答えたらよいだろうの意である。前歌までの待つ月から、袖に宿る月へと移っている。

やどる:月の光が水などに映る
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
待てとしも頼めぬ山も月は出でぬ 言ひしばかりの夕暮の空
次の歌
数ならぬ身はうき雲のよそながら あはれとぞ思ふ秋の夜の月