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時鳥鳴くや五月の卯の花の
うきことの葉のしげきころかな

歌の意味
ほととぎすの鳴く五月の卯の花のように、つらい言葉ばかりが多いこのごろだなあ。
鑑賞
恋歌 527

詞書は前の歌に続き「寄雨恋」
 ほととぎすの鳴く五月に咲く卯の花の名から「憂き」を引き出し、つらい言葉ばかりが多く聞かれるこのごろだと嘆いた歌である。前歌と同じ上の句の形で始めている。
 底本の注記によれば、類従本では初句から二句に異同がある。ここでは「なくや五月の」とする。

 初句「時鳥」は、前歌と同じ初句である。
 二句「なくや五月の」は、前歌の二句と同じ句である。
 三句「卯の花の」は、初夏に白い花を咲かせる卯の花のの意で、「う」の音から「うき」を導く。
 四句「うきことの葉の」は、つらい言葉のの意で、「うき」に卯の花の「う」と憂きとを響かせ、「ことの葉」に言葉と葉とを掛ける。
 結句「しげきころかな」は、多いこのごろだなあの意で、葉の茂ることと言葉の多いこととを重ねる。本巻の第四百九十七首の「しげけれど」と同じく、茂ることに恋の嘆きを託している。

うのはな:初夏に白い花を咲かせる植物
うき:卯の花の「う」と、憂き(つらい)を掛ける
ことのは:言葉と、木の葉を掛ける
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
時鳥鳴くや五月のさつき雨の 晴れず物思ふ頃にもあるかな
次の歌
郭公待つ夜ながらの五月雨に しげきあやめのねにぞ鳴くなる