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郭公待つ夜ながらの五月雨に
しげきあやめのねにぞ鳴くなる

歌の意味
ほととぎすを待つ夜のままに降る五月雨の中で、茂るあやめの根のように、声をあげて泣いているようだ。
鑑賞
恋歌 528

詞書は前の歌に続き「寄雨恋」
 ほととぎすを待つ夜に降り続く五月雨の中、茂るあやめの根から「音」を引き出し、ほととぎすが鳴くように、自分も声をあげて泣いていると詠んだ歌である。
 底本の注記によれば、定家所伝本では結句を「音にぞ鳴きぬる」とする。ここでは底本の本文に従う。

 初句「郭公」は、前二首と同じく、ほととぎすの意である。
 二句「待つ夜ながらの」は、待つ夜のままのの意で、来ない恋人を待つ夜を重ねる。
 三句「五月雨に」は、五月雨の中にの意で、本巻の第五百二十六首の「さつきあめ」と同じものである。
 四句「しげきあやめの」は、茂るあやめのの意で、その根から「ね」を導く。前歌の「しげき」と同じ語である。
 結句「ねにぞなくなる」は、あやめの根と、声をあげて泣く音とを掛ける。「ぞ」は係助詞で、推定の「なる」と連体形で結ぶ。雨に寄せる恋の三首をしめくくっている。

さみだれ:五月雨、梅雨
あやめ:菖蒲
ね:あやめの根と、声をあげて泣く音を掛ける
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
時鳥鳴くや五月の卯の花の うきことの葉のしげきころかな
次の歌
色をだに袖より伝ふ下萩の 忍びし秋の野辺の夕露