わが袖の涙にもあらぬ露をだに
萩の下葉は色に出でにけり
- 歌の意味
-
私の袖の涙でもない、ただの露でさえ、萩の下葉は色に出てしまったことだ。
- 鑑賞
-
恋歌 530
詞書は前の歌に続き「寄露恋」
自分の袖を濡らす涙でもないただの露にさえ、萩の下葉は色づいてしまったと詠み、まして涙に濡れる自分の思いが色に出ないはずはないと、言外に忍ぶ恋の苦しさを示した歌である。
底本の注記によれば、類従本では結句を「色に出けり」とし、佐佐木信綱の『校註金槐和歌集』では「色に出にけり」とする。ここでは底本の本文に従う。
初句「わが袖の」は、私の袖のの意で、本巻の第五百二十首の初句「わが袖に」と同じく袖を詠む。
二句「涙にもあらぬ」は、涙でもないの意で、字余りである。
三句「露をだに」は、露にさえの意で、「だに」は類推を表す。
四句「萩の下葉は」は、萩の下葉はの意で、前歌の「下萩」を受けている。
結句「色にでにけり」は、色に出てしまったことだの意で、「けり」は詠嘆である。前歌の「色をだに」と同じく、色に出ることを詠んでいる。
したば:下の方の葉
いろにいづ:色づく、思いが表に表れる
- 作者
-
源実朝
- 出典
-
金槐和歌集
- 前の歌
-
色をだに袖より伝ふ下萩の 忍びし秋の野辺の夕露
- 次の歌
-
秋萩の花野の薄露を重み おのれしをれてほにや出でなむ