古典和歌stream

待つ人は来ぬものゆゑに花薄
ほに出でてねたき恋もするかな

歌の意味
待つ人は来ないのに、花すすきが穂に出るように思いを表に出してしまって、いまいましい恋をすることだなあ。
鑑賞
恋歌 532

詞書「寄薄恋」
 待っている人は来ないのに、花すすきが穂を出すように恋心を表に出してしまい、いまいましい思いをしていると詠んだ歌である。前歌の「ほにや出でなむ」を受け、表に出てしまった恋を詠んでいる。
 この歌は『新続古今和歌集』に入集している。賀茂真淵は、万葉集に「穂に出でて」と詠んだ例が多いと評している。

 初句「待つ人は」は、待っている人はの意である。
 二句「こぬものゆゑに」は、来ないのにの意で、「ものゆゑに」は逆接である。
 三句「花薄」は、穂の出たすすきの意で、「ほ」を導く。
 四句「ほにでてねたき」は、穂が出ることと、思いが表に出ることとを掛ける。「ねたし」は、いまいましい、くやしいの意である。
 結句「恋もするかな」は、本巻の第四百八十四首と同じ結句である。

ほにいづ:穂が出る意と、表に現れる意を掛ける
ねたし:いまいましい、くやしい
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
秋萩の花野の薄露を重み おのれしをれてほにや出でなむ
次の歌
撫子の花に置きゐる朝露の たまさかにだに心隔つな