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撫子の花に置きゐる朝露の
たまさかにだに心隔つな

歌の意味
なでしこの花に置いている朝露の玉のように、たまにでも心を隔てないでほしい。
鑑賞
恋歌 533

詞書「寄瞿麦恋」
 なでしこの花に置く朝露の玉から「たまさか」を引き出し、たまにでもよいから心を隔てないでほしいと恋人に願った歌である。なでしこは愛し子に通じ、いとしい人を思わせる。
 底本は題を「寄瞿來恋」と記すが、なでしこを詠む題であることから「寄瞿麦恋」とした。底本は二句に「ぬる」と傍記し、類従本では二句に異同がある。ここでは底本の本文に従う。

 初句「なでしこの」は、撫子の花のの意で、撫でし子に通じて愛しい人を思わせる。
 二句「花におきゐる」は、花に置いているの意である。
 三句「朝露の」は、朝露の玉のようにの意で、玉から「たまさか」を導く。
 四句「たまさかにだに」は、露の玉と、たまにの意とを掛け、たまにでもの意となる。本巻の第四百七十五首の四句と同じ句である。
 結句「心へだつな」は、心を隔てるなの意で、「な」は禁止の終助詞である。前歌までの秋のすすきから、夏の撫子へと移っている。

なでしこ:撫子、撫でし子に通じて愛しい人を思わせる
たまさか:露の玉と、たまにの意を掛ける
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
待つ人は来ぬものゆゑに花薄 ほに出でてねたき恋もするかな
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菊よりも人の心は初霜の 置きあへず色の変はるなりけり