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忍びあまり恋しき時は天の原
空飛ぶ雁の音に鳴きぬべし

歌の意味
忍びきれずに恋しい時は、大空を飛ぶ雁のように、声をあげて泣いてしまいそうだ。
鑑賞
恋歌 537

詞書「寄雁恋」
 こらえきれないほど恋しい時には、大空を鳴き渡る雁のように、声をあげて泣いてしまいそうだと詠んだ歌である。
 底本は結句に「ぞ鳴きつる」と傍記する。ここでは底本の本文に従う。賀茂真淵はこの歌に合点を付している。

 初句「忍びあまり」は、こらえきれずにの意で、字余りである。
 二句「恋しき時は」は、恋しい時はの意である。
 三句「天の原」は、大空の意で、本巻の第四百三十一首の初句と同じ語である。
 四句「空とぶかりの」は、空を飛ぶ雁のようにの意である。
 結句「ねに鳴きぬべし」は、声をあげて泣いてしまいそうだの意で、雁が鳴くことと自分が泣くこととを重ねている。前歌の七夕から、秋の雁へと移っている。

しのびあまる:こらえきれない
ねになく:声をあげて泣く
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
七夕にあらぬわが身のなぞもかく 年に稀なる人を待つらむ
次の歌
雲隠れ鳴きて行くなる初雁の はつかに見てし人は恋しき