逢ふ事のなき名をたつの市による
かねて物思ふ我が身なりけり
- 歌の意味
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逢うこともないのに根も葉もない浮き名が立つ。辰の市に寄って金を払うように、あらかじめ物思いをする私の身であることだ。
- 鑑賞
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恋歌 541
詞書は前の歌に続き「寄金恋」
逢うこともないのに浮き名ばかりが立ち、辰の市に寄って金を扱うように、まだ逢わないうちから物思いをする身であると詠んだ歌である。金に寄せる恋の題で、「たつ」「かね」に二重の意味を持たせている。
底本は三句に「うる」と傍記する。底本の注記によれば、類従本と定家所伝本では三句に異同がある。ここでは底本の本文に従う。
初句「あふ事の」は、逢うことのの意である。
二句「なき名をたつの」は、事実無根の浮き名が立つことと、辰の市とを掛けている。
三句「市による」は、市に寄るの意である。
四句「かねて物おもふ」は、金と、あらかじめの意の「かねて」とを掛けている。字余りである。
結句「我身なりけり」は、私の身であることだの意で、「けり」は詠嘆である。前歌の黄金を受け、金の題を続けている。
なきな:事実無根の評判、浮き名
たつ:名が立つ意と、辰の市の辰を掛ける
かねて:金と、あらかじめの意を掛ける
いち:市場
- 作者
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源実朝
- 出典
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金槐和歌集
- 前の歌
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黄金掘る陸奥山に立つ民の 命も知らぬ恋もするかな
- 次の歌
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忘らるる身はうらぶれぬ唐衣 きてもたちにし名こそ惜しけれ